【金の鎖】
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受け取ってもらえたなら、
もうやめよう。
受け取ってもらえなかったら、
このままだ。
* * * * *
「ナーミさん」
いつもより甘い声を出してみる。
「なに」
いつもより低い声の彼女。
だめか。
じゃあ、これは?
「ナミさん」
腹の底から、低音の発声をしてみる。
「きゃははは!なにそれ!誰のモノマネ!?」
・・・笑いをとってしまった。
「ナミさん!!」
「なによ!大きな声出さないで!!」
・・・・・・
「・・・・・・ナミさん…」
「・・・なによ」
とっさに抑えたおれの掠れ声はやっと彼女に響いたようで、
心なしか赤く染まった頬を隠すように顔をそむける。
「これ、なんだけど・・・」
もはや賭けだ。
まずはベット。
「受け取って?」
おれは前日まで停泊していた町で買っておいた、
金の鎖に、一粒金塊をあしらったネックレスを
彼女の前に差し出した。
「わあ・・・きれい!これ、本物!?」
ナミさん、目が“ベリー”だ。
しかしそんな君も、らしくてクソかわいい。
「もちろん!ナミさんにフェイクは似合わないよ」
「わかってるじゃない!ありが・・・」
「ちょっと待った!」
彼女の言葉を遮るように、
おれは再度声を荒げる。
「な、なによ!びっくりした!」
そして、ショー・ダウンだ。
「ごめん。あのさ・・・そのネックレス、実はもう一個あるんだ」
おれは懐から恐る恐る同じものを取り出した。
「え・・・」
「・・・おれとお揃いじゃ、いや?」
懇願するように、彼女の瞳をのぞきこむ。
「いやって・・・」
「同じもの、身に着けたいんだ」
「・・・・・・それって・・・ほとんど脅迫だわ」
「そ?」
脅迫なんて、そんなつもりはさらさらない。
純粋に、君と同じものを。
そう思ってる。
・・・いや、純粋ではないか。
おれはきっとこの金の鎖でつながりを見せ付けて、
君を縛ろうとしているんだ。
もちろん君がこれをほしがるのも計算のうちだ。
だけどこれくらい、手の内だろ?
いかさまでは、ないはずだ。
彼女はおれとネックレスと、
交互に何度か目をやって、
最後に自分の爪先に目を落として言った。
「・・・わかったわ。じゃあ、サンジ君つけて?」
そうして後ろ髪を持ち上げる彼女を見たおれは、
心臓を打ち抜かれた気分だった。
一瞬、息ができなくなる。
ああ・・・ナミさん、おれは賭けに勝ったのか?
もし、そうだとしたら、
おれはもうやめる。
・・・自分を抑えるのを。
END
2008/8
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