【残り火】

-P1-


最後の夜は二人で、

泣きながら抱き合ったね。



恋の終わりを告げながら、

揺らめく、

残り火。




* * * * *




二人の出会いはありがちな、同期入隊。

そしてきっかけもありがちで。



彼のことは初めから気になってた。

だって、わたしのタイプど真ん中だったんだもの。

後にも先にこんな完璧な男、みつからないと思う。

・・・容姿に関してだけはね。



あの日はわざと訓練中に失敗したフリをして、
君の前で泣いた。

気づいてたかしら。

今となってはどっちでもいいけど。



君は荒っぽくわたしの体を抱き寄せて、
荒っぽく、口づけた。

わたしったらそれだけで腰の力が抜けちゃって、
君に抱えられてそのままベッドに落とされたのよね。



それ以来君の白い煙に隠れて、
誰も知らない秘密を増やした。

誰も知らないわたしを見せた。

何度も何度も、
何も言わずに手をとるように、

食い尽くすような口づけ交わして、
体中を熱くした。

何度も何度も・・・

終わりなんて、訪れないと思ってたのに。



「もう、これっきりだ。」



聞き返す間もなく唇を塞がれて、
相変わらずわたしは腰砕けで。

途中でわたしの頬に落ちたのは、

汗か、涙か。

今となってはどっちでもいいけど。



しばらくして、君の栄転を知った。

下につくのは可愛いお譲ちゃんですって?



・・・嫉妬なんて、冗談じゃない。

笑っちゃうわ。

ヒナ笑っちゃう。

笑いながら、結んだこぶしにぼたぼた落ちる涙を、
わたしは今でも覚えてる。

そんなわたしを後ろから抱きしめたのは、
やっぱり君だったわね。

これっきりって自分で言ったくせに。

君は加減を知らないから、
抱きしめるその腕が苦しくて、
わたしはまた笑いながら、泣いた。

そして君は激しくわたしにぶつかりながら、
初めて愛の言葉を口にしたんだ。



だけどその言葉を、今では思い出せない。

思い出さない。

それは、終わりの言葉でもあったから。



「泣いてるの・・・?スモーカー君。」



わたしが覚えてるのは、
とめどなく溢れ出る涙だけよ。



ため息でさえ吹き消せそうな残り火は、
凍えたわたしをけっして暖めることなく、
ただ、くすぶるだけ。



だけどあんなにこぼれた涙では、
消えない残り火。





消せない、



残り火。







END
2008/9




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