【愛の】

-P1-



私が知りたいことはふたつだけ。

ひとつは真の歴史。

もうひとつは、



* * * * *



興味深いリング状の島から出航して一晩、
温暖な海域に入ったのか夜風は生暖かい。

意識を取り戻した私は眠れずに甲板で外気に当たっていた。

いちど芯まで凍った私にとって、
普段ならば不快感をもたらす湿気を含んだ空気は、
じんわりと体に染み込こむようで逆に心地よかったのだ。

ちなみに彼が見張り番だということを、知っていたわけではない。

「意外だったわ、とても」

「……なにが」

私が見張り台に向かって唐突に呼びかけると、
先ほどまでマストにもたれてゆらゆらと船を漕いでいた彼は、
面倒くさそうに片目だけでこちらを見た。

「あなた、かばってくれたじゃない」

「いつ」

まったく、簡潔な会話で結構なことだわ。

私がショールをしっかりと羽織りなおして、
まだ少しだるい体を甲板の手すりから離し歩きだすと、
彼のその眼光鋭い眼差しがついてくるのを感じる。

あなたが私を見るとき、
まるで獲物の追うような視線をよこすようになったのはいつからだったかしら。

つい先日からのような気もすれば、
最初からだったと言われるとそのような気もする。

「私があの男に……いえ、覚えていないならいいわ」

「……覚えてる」

私はいつ狩られてもおかしくないと思っていた。

あなたの視線には多分の疑念が含まれていたから。

だけどあの時、
あの男からかばって目の前に立ちはだかった背中に、
私は兆しを見たのだ。




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