【愛の】

-P2-



「今日は素直なのね」

「なんだよそりゃ…」

「ねえ、梯子をおろしてちょうだい」

まだ寝ぼけ顔で会話を続けていた彼は、
私の要求にわざとらしく目を剥いてこちらを見下ろした。

「上がってどうすんだ、見張り交代かよ。そいつァありがてえが…」

「ちょっと知りたいことがあって。お邪魔してもいいかしら」

彼は少し黙って真黒な海を一度見やり、返事の代わりに縄梯子の縛めを解いた。

そして私がそれに足をかけるのを確認すると胡坐の姿勢で腕を組んで再び瞼を落とし、
見張り台に到達するころにはすでに整った歯列をむき出しにしていびきをかいていた。

それを見て自然とこぼれた笑みに、胸の裏側を擦られたようなむず痒さを感じる。

「ねえ、あなたいくつだったかしら」

「……くだらねェ、歳なんてどうでもいいだろ」

そうね、

「そうね、ごめんなさい」

そうよこの海に出てしまえば年齢なんて、剥げたペディキュアくらいどうでもいいことなのに。

「はッ…お前こそ、今日は素直なんだな」

あげ足をとったつもりの彼がのぞかせた青年とも少年ともつかない表情に、
私の探究心は掻き立てられる。

「初めてだわ、人に年齢を尋ねるなんて。
なぜかしらね……気になるのよ、あなたたち」

「そうかよ。おれはお前が気になるがな」



掻き立てられる。



「お前の……この船に乗った目的が」

「……知りたい?」

なぜかしらね、気になるのよ……あなたが。






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