【青いイチゴ】
-P4-
王宮の最上階にあるふたつの部屋からは、
昇る陽も、沈む陽も、
格別な輝きを見せる。
私は奇しくも、西の部屋を選んだ。
「サンジさん」
「ん、なんだい?ビビちゃん」
振り向いた彼は、
きっといつもの優しい笑みを浮かべているに違いない。
そんな表情を見たら、また気持ちが揺らいじゃう。
おあつらえ向きの逆光で彼の表情は見えないけれど、
念のため、私は彼の背後まわった。
「ビビちゃん・・・!?」
私はそのまま彼の背広の裾をつかみ、
その広い背中に額をつけた。
「このまま聞いて?サンジさん・・・。」
しぼり出した声は震えていて、
自分が緊張していることを思い知る。
「どーしたの・・・?ビービちゃん」
私の声のその振動が伝わったのか、
ひときわ優しく、あやすような口調で彼はささやいた。
これまでの戦いで何度も何度もつぶれそうになっては、
必死に持ちこたえてきた私の心は、
これまでで一番の負荷に耐えていた。
裾をつかんでいるこの手を、
このまま彼の胴体にまわしてしまいたい。
だけど・・・・
「サンジさん、私、ね」
「うん」
「あなたが好きです」
自分でもびっくりするくらい急に涙がこぼれる。
「ビビちゃん・・・」
振り向こうとする彼を制止して、私は続ける。
「あんな過酷な状況の中で、あなたの存在にどれだけ救われてきたことか・・・」
「つらくてつらくて逃げ出してしまいたいときも、
あなたが私を気にかけてくれるから、必死に戦ってくれるから、
私は踏みとどまってこられました」
「おいおいビビちゃん、おれァそんな立派なもんじゃねェよ。
あいつらが・・・」
「ええ、わかっているんです!」
そう、わかっている。
ルフィさんやみんなには、
感謝したってしきれない。
「だけど、私は・・・私の心は、あなたを思うことで挫けずにすんだの・・・!」
語尾が叫びになる。
私はひとつ大きく深呼吸をした。
できるだけ冷静に、
できるだけ正確に、
この思いを伝えるために。
「サンジさん、私はいつも気がつくとあなたを目で追っていました」
「だから気がついていたんです。
あなたのその瞳が、誰を追っているのか」
だから見てしまったの。
昨晩、眠っているはずのあなたが、
少しずつ彼女に近づいてゆくのを。
部屋を出た、本当の理由よ。
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