【ぶくぶく】

-P3-



ナミさんは顔全体に「しまった!」
と書いてあるみたいな表情だ。

「なぁんでナミさんは、おれが“ナイト”を名乗ったことを?」

「な、なんのことよっ・・・」

心なしか彼女の声が弱々しくなった。

おれは、ニヤニヤがとまらない。

そんなおれたちを黙って見ていたロビンちゃんが、
ため息と一緒にちょっと意地悪く言った。

「お邪魔のようね。私は船に戻るわ」

「ちょっとロビン!お邪魔ってなによそれ!」

ナミさんはぶんっと風を切ってロビンちゃんを振り向く。

「見てのとおりだわ。船には“彼ら”もいるし、
退屈しないですみそうだもの。お気になさらず、ごゆっくり」

ロビンちゃんはごゆっくり、を言ったときにはもう、
もと来た道へ踵を返していた。

ナミさんはあわてて呼び止めていたけれど、
迷いなく進むロビンちゃんの足は速く、どんどん遠のいていく。

それでも彼女を引きとめようとしていたナミさんの両肩から、
急に白い花が咲いた。

いや、白く美しい花のような、ロビンちゃんの手が。

可憐な花はナミさんの両頬をつかみ、
ふわりとおれのほうに振り向かせる。

ナイス、ロビンちゃん。

そしておれたちはやっと向き合うことができた。

「いやあッもう!ロビンのばか!!」

ふと地面を見ると、花の手は彼女の両足首をもとらえていた。

動けない彼女がやっと抵抗をあきらめると花の手は消え、
解き放たれた足は仁王立ちになる。

そしておれをにらんで腕を組み、
抵抗のせいか弾む息をおさえて言った。

「別に・・・ッ」

「あのときのこと、覚えてるわけじゃないから・・・!」

おれはやっぱり、ニヤニヤがとまらない。

「あのときって〜!?ナミすわんっ!!」

「だからっあのとき・・・あああ〜もうっ!!」

彼女は組んでいた両腕を頭上に思いきり伸ばし、
開き直ったように言った。

「そうよ“あのとき”!
危うくあの変態スケルトン男の花嫁にされそうになっていたとき、
私に意識はあったわ!!」

「だけど、体は動かないし、声も出ない。
おまけにあんたがあんまり恥ずかしい台詞ばっかり吐くもんだから、
気を失ったことにしておいたのよ!!悪い!?」

「いや、悪くない」

即答したおれに彼女は一瞬ぐっ、と息を呑んだが、
すぐにもとの剣幕に戻って言った。

「だけど覚えてないって言ったでしょっ!薬で朦朧としてたし・・・
だからこの話はもうおしまいって、きゃあァ!!」

おれは言葉途中の彼女を横抱きにして持ち上げる。

そしてそんなおれを後押しするかのように、
飛び交っているシャボンのひとつがすぐそばでぱんっと音をたてて弾けた。




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