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遅れて懺悔室から出てきた女を
男は弾む息を必死に抑えて黙視する。
「神父様、懺悔の途中だわ」
女は一歩ずつ男に近づき、息がかかる距離で歩みを止めた。
そして男が首からかけているロザリオを掴んで自身に引き寄せてから、
冷静な口調で告解を続けた。
「私の罪はね、神父様」
「聖職者に欲情していることよ」
言うか言い終わらないかのうちに男は女をかき抱き、
ふたりは引き合うように唇を重ね合わせた。
どこまでも届いてしまいそうな互いの舌が、
一切の隔たりを拒むかのように絡み合う。
食ってしまいそうなその口づけは、
抑えていた時間の反動。
あの戦いの地で肌と肌とが触れたその日から、
ずっと抑えていた欲望。
広い聖堂がふたつの水音と荒い呼吸を反射させそれは響き渡り、
二人はさらに欲望を昂らせる。
いつの間にか陽は地平線すれすれにまで落ちて、
夕闇があたりの空気を冷やしていくのとは裏腹に、
聖堂内の温度はどんどん上がっていくようだった。
そして激しい口づけのさ中、
巨大な波にのまれる感覚がふたりを襲い同時に鳥肌を立る。
のまれる。
闇の海に、のみ込まれる。