【スティル・グリーン】

-P13-



「ちょうどよかったわ」

太眉の女性の顔が明るくなる。

「なぜこのチラシを持っているかというと、
私たちこの女の人、見たのよ。
あなたに知らせようと思って!」

「え!本当ですか!?」

ヒメウが流れ着いて1週間。

待ちに待った情報が思ったより早く入り、
おれはつい大きな声を上げてしまった。

隣のテーブルのウエイターがちらりとこちらを振り返る。

おれはそれにはかまわず太眉の女性に続きを促した。

「それで!?」

「サンリーフのマリーナで人だかりができていたことがあって、
覗いてみたらこの方によく似た女性が横たわっていたの」

「え・・・横たわって・・・?」

「ああ、大丈夫よ。彼女は人命救助を受けていたの。
ちょっと心臓が止まっていたみたいだけど、
ちゃあんと息を吹き返していたわ」

ばら色の女性がまたもうふふ、と笑いながら、
さらにウインクを付け加えた。

「あなたの似顔絵がこんなに似てたんだから、
間違いないと思うんだけれど・・・」

「そうですか。ありがとうございます」

女性の物言いにやや引っかかるところはあったが、まあいい。

生きてればいいんだ。

おれはマダム二人にデザートのサービスを約束して、
足早にその場を去った。



サンリーフ・・・ここから南東にある小島で、
金持ち連中が別荘を構えるいわばリゾート地だ。

おれはヒメウにこの話を告げるか迷った。

なぜなら、おれが唯一操縦できる
買出し用の小船で行くとなると、
サンリーフまで優に3日はかかる。

やっと回復してきたばかりのヒメウには、
負担が大きいだろう。

しかも確証はない旅だ。



・・・だけどおれだったら・・・?



もし自分の母親が生きているかもしれないと知ったら、
なにを差し置いても、迷わず探しに行くな。

もし、時間を戻せるのなら、おれは・・・



決めた。

ヒメウは、おれが守ればいい。

おれと同じ目になんて、あわせるもんか!



そう決心したそこからのおれの行動は素早く、
その足取りが心なしか軽やかになっていることに気づく。

決して楽ではないことが
容易に想像できるこの旅に、
おれは浮かれてんのか・・・?

だとしたらなんで。

ヒメウと海に出ることに?

いや、違う。

「マシコに会えるかもしれないことにだ」

おれは半ば自分に言い聞かせるかたちでつぶやいた。




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