【スティル・グリーン】

-P14-



ヒメウには事を告げぬまま、
おれは準備を続けた。

ヒメウに言ったらどんな顔するかな、

とか、

あいつはまた泣くのかな、

とか、

そんなことを考えていたら、
準備なんて瞬く間だった。

念のため一週間分の食料を調達し、
小船はこっそり確保した。

あとはヒメウに話すだけだ。

いざ伝えに行こうと、
荷物を隠している厨房裏の乾物倉庫から足を踏み出すと、
長い脚がおれの行く手を阻んだ。



「・・・デュラム!」

「よう、サンジ。その大荷物はなんだ?」

「別に・・・!調理の練習用だよ!」

「そんなにためこむ必要が?」

・・・・ねェよ。

おれは返す言葉がなくなり口を噤んだ。

「いいかサンジ、よく聞けよ?」

「聞いてるよ!」

デュラムがらしくなく、
子供に言い聞かせるような口調で言ったので、
おれは不機嫌にそう返した。

デュラムはひとつため息をつき、続けた。

「おれは・・・お前がその食料をどう使おうが、
小船を一艘隠していようが、

“お前がどこぞの王国の王子様だろうが”、

とやかく言うつもりはねェ」

「!!」

「だがな、お前があの弱った小鳥ちゃんを連れ出すつもりなら、
おれは黙っちゃいねェぞ?アァ!?」

デュラムは語尾を強め、
見たことない形相でおれを睨んだ。

そんな顔されたって、恐かねェよ。
そんなことより・・・

「お前・・・!何を知って・・・」

「おれァなんも知らねェよ」

「ただ、“おれの船の”元クルーのルッコが、
ノースブルーのリリースクでコックをしていたってこと以外はな」



・・・なんだって・・・?



「・・・・・・なんだって!?お前、ルッコを・・・?」

「ハハ・・・!当たりか」

「あ…あ…!お前・・・!鎌ァ掛けたな!!」

「お前が勝手にしゃべってるんだろ?おれはなにも」

おれは言葉途中のデュラムに飛びかかり、
おれの頭よりずいぶん高い位置にある胸倉を掴んだ。

「うるさい!!!お前になにがわかる!!
おれは・・・おれは・・・」

これまで忘れたふりをしてきた色んな感情があふれ出して、
それはそのまま涙にかたちをかえる。

デュラムはおれの後ろ襟をつかみ自分から引き離すと、
感情を押し殺すように言った。

「落ち着け、サンジ」



「ルッコは・・・死んだんだな?」



「・・・!・・・・・・!」

おれはもはやまともにしゃべることもできないほど、
涙を流して泣いていた。

それは国を出た3年前から、
しこたまためこんでた血涙だった。



お前にわかるか?デュラム。



なにもできなかったおれの無念が。




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