【スティル・グリーン】

-P15-



溜め込んでいた涙は、
そう簡単には止まるわけもなく。

「ヒック・・・う・・・ルッコは・・・おれのせいで死んだんだ・・・」

「・・・なんだと・・・?」

デュラムが大きな目をさらに大きく見開く。

「おれが、ヒック、作ったスープを飲んで、死んだんだ!!」



正確には“おれの初めて作ったスープに入れられた毒”によってだが。



* * *



暇さえあれば厨房に入り浸りだったおれは、
当然のように料理を作ってみたくなっていた。

どうせ作るなら、一番にルッコに食わせたい。

おれはルッコに内緒で、
城の見習いコックに手伝ってもらい、
こっそり調理の練習をしていた。

「王子、スジがいいですよ!」

「本当!?」

さほど年も変わらない見習いに言われた言葉でも、
おれにとってはこの上ない賛辞だった。

ちなみに最初の料理をスープにしたのは、
一番個性が出るからと、
見習いにアドバイスをもらったからだ。

そして何度か試作を重ね、
ついにそのスープは完成した。

太っちょのルッコのことを考えて作った
コンソメベースの野菜たっぷりスープは、
我ながら立ち上る湯気の匂いだけでよだれが出てくる。

「ぼく、ルッコを呼んでくる!
火のほう、よろしくね!!」

料理の成功を確信したおれは嬉しさのあまり、
大事な煮込み作業もそこそこに、
ルッコを呼びに走っていった。

「かしこまりました、王子」

そう返事を返した見習いの表情に、
影が差したことにも気づかないまま。



「ルッコ!早く早く!」

「ウフーゥ、プリンス!
そんなにひっぱってはルッコの腕はもげてしまいます」

ルッコはおれに手を引かれ、
苦しそうに巨体を揺らしながら厨房に入ったが、
おれが料理を用意していたことを知ると、
その苦しそうな表情をやわらかくくずした。

「・・・このスープを、プリンスが?」

「うん!ぼく、将来はコックになって、
オールブルーで捕まえたさかなを料理するのが夢なんだよ!」

「ルッコのおかげでぼくも夢を得ることができたんだ。
このスープは、そのお礼さ!!」

「プリンス・・・」

ルッコは大きな体に似合わない、
小さな涙の粒をその瞳に浮かべて微笑んだ。




そしてその直後。

ルッコは、

おれのスープをひと口飲んで、

椅子から崩れ落ちたんだ。




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