【スティル・グリーン】
-P16-
「ルッコォォォ!!」
なにがなんだかわからなかった。
ただ、目の前には血を吐いて倒れているルッコがいる。
そして赤いエプロンの胸元は、
朱の深みを増してゆく。
おれは転がるようにルッコに駆け寄った。
「ルッコ!ルッコ!どうしたの!?」
「プ・・・リンス・・・カハッ・・・」
彼の白髭はもはやその体を成していない。
「なんで・・・?なんで!?ぼくのスープを飲んだから!?」
「・・・!プリンス・・・!違う!!」
焦点の合わなかった目が、
わずかに光をとりもどしおれを見た。
「プリンス、ルッコには時間がありません。
助けは呼ばなくていい・・・
これは最後のお願いです、
黙って聞いてくださいますか・・・?」
おれはわけがわからなくって、
言われなくてもしゃべることなんてできない状態だった。
仰向けに倒れたルッコの広い胸に手を置いて、
ただただ、かぶりを縦に振ることしかできない。
ルッコはいったん呼吸をおくと、
命を確かめるようにゆっくりと、
だがおれにちゃんと伝わるようにはっきりと、
話し始めた。
「プリンス・・・この城は、もう、だめです」
「どうか、城を、出て、ください」
「どうか、“あなたは”、“オールブルー”を、
みつけてくださいますよう・・・ゴホ・・・ッ」
ひときわ多量の血をみたおれは
思わず大声を上げそうになったが、
ルッコの目にはまだ光が宿っていたので、
かろうじてそれをこらえた。
「ハァ、それと、これが、プリンスの、せいではないことを、
ルッコは、ハァ・・・知っています」
「プリンス・サンジ・・・どうかこのことが・・・この“死”が、
あなたの、妨げに、なりませんように・・・」
ルッコの目からたくさんの、
今度は体にみあった大粒の涙が零れ落ちる。
「そして・・・ハァハァ・・・プリンスに、
やさしい、静寂が、訪れますように・・・」
「・・・・・・・・・ルッコ・・・?」
黙っちまったルッコの目は、
光を失っていた。
「う・・・わぁぁぁぁっあっあ!!」
厨房におれの慟哭が響き渡り、
そばにいて一部始終を見ていた見習いがおれの肩を抱く。
「王子!なぜこんなことに・・・!!」
「ルッコ・・・ルッコォォ・・・」
そのとき。
「なにごとか」
背後から今いちばん聞きたくない低音が響いた。
「王!!」
「父上・・・!?」
そこには、ふだんけっしてこんなところに足を踏み入れることのない、
親父の姿があった。
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