【スティル・グリーン】
-P20-
「なぁんだ、サンジ」
おれの話に区切りがつくと、
ラビオはすぐにいった。
「抱きしめちゃえばいいのに!」
「な・・・ッ簡単に言うけど・・・!」
「バカだなサンジ、恋は嵐さ。
情熱が巻き起こすつむじ風に身を任せたときの快感といったら・・・」
ラビオは恍惚の表情で目をつむる。
「それを味わわないなんて、もったいないよ?」
「そういうけどな、ラビオ。
おれにだって色々事情っつーもんが・・・」
「あァ、ヒメウの母親と知り合いで、探してんるんだろ?」
ラビオはこともなさげに言ってのけた。
「な・・・おい!どいつもこいつも!!
何でおれの事情はこうも筒抜けなんだ!!」
「あはは、サンジ、どいつもこいつもっていうのはよくわからないけど、
ぼくはこのあいだ君が給仕したレディ二人との怪しげな会話を、
新入りウェイター君からちょこっと報告されただけだよ?」
給仕長はフロア全体を把握しておかないとね、と、
ラビオはウインクと一緒に付け加えた。
「盗み聞きかよ・・・いい趣味とはいえねェな」
「なんだよサンジ!こんなもの配っといて、
興味を持つなというほうがおかしいじゃないか!」
ラビオの手には、たった今引き出しから引っ張り出された
“例の”尋ね人のチラシが握られていた。
「う・・・まあそれは隠すつもりはねェ。
ここの野郎どもの目に入ってもいいつもりで配ってたが・・・
でもなんでこのひとがヒメウの母親ってわかったんだ?」
「ん?勘」
やっぱラビオにはかなわねェ。
「サンジ、恋に迷いは禁物だ」
ラビオが少し真剣な表情をおれに向ける。
「事情は事情。恋は恋。
早くしないとヒメウちゃん、眠っちゃうよ?」
そう言って、手の甲を振りながらおれをさっき入ってきたドアへ促した。
おれにはまだこの気持ちの名前がわからない。
だけど、いつも的確な言葉をくれる、
ラビオを信じてみてやることにした。
「まあね・・・なんで君が他人に伝わるほど
ヒメウちゃんの母親の顔を知っているかまでは、
ぼくは知らないけどさ」
興味なさげにつぶやいたラビオの声は、
すでに早足で廊下を進んでいたおれには届かなかった。
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