【スティル・グリーン】
-P24-
おれが身の丈ほどもあるうえに
大暴れするトサカをいとも簡単に抱えて船に戻ると、
すでにヒメウが船の甲板にいた。
「おはよう、サンジくん」
「はよ・・・」
おれは昨夜の余韻か染まる頬を見られたくなくて
うつむき気味に返事をする。
「おっサンジ、いいもん捕まえてきたなァ!」
「あ、だろ!?」
おれたち料理人にとって、
卵があれば料理の幅は無限に広がる。
「・・・それに、いざって時には、な?」
デュラムが片眉を上げ見やると、
トサカは尋常じゃない量の汗を流し始めた。
「えっ!このこ食べちゃうんですか!?そんな・・・」
ヒメウの露骨な“食べちゃう”の言葉に、
もはやトサカは虫の息だ。
「いや〜ヒメウちゃんが食べるなと言うならば、
もちろんそんなことはしないさ〜!」
「おい!デュラムその目やめろ!!」
間髪入れずにおれがデュラムの“エロ目”をつっこむと、
普段にはないおれの反応に気づいたのか、
ドエス・デュラムは嬉しそうに続けた。
「おっとこわいこわい、“王子様”は“お姫様”がお好きなようだね?
手打ちにされないように気をつけなきゃーなァ!!」
「てめェ、やかましいぞ!」
そんな二人のやり取りを聞いていたヒメウが、
焦ったように会話に割って入る。
「ちょっと待ってくださいデュラムさん。
王子って・・・あなたは何か知っているのですか?」
「あァ、言ってなかったな」
デュラムが続きをおれに促す。
「ヒメウ・・・デュラムは、ルッコが乗ってた海賊船の、元船長なんだ。」
「ええ!?ルッコ・・・さんの?」
ヒメウは“ルッコ”の発音のときに、
少しおれの顔色をうかがいながら、言う。
おれはヒメウも事情を知っているのかな、と思う。
「そうなんだ。
ところでルッコは海賊船でもコック長だったのか?デュラム船長」
おれは語尾にいやみをこめた。
いつもお返しだ。
「それも言ってなかったな・・・。ルッコはうちの戦闘隊長だったんだ」
おれとヒメウは顔を見合わせた。
城でのルッコを知っていたからだ。
「そんな顔すんな。あいつァおれの船にいたときは、
“サタン”と呼ばれていたほどだったんだぞ?」
「サタン?・・・サンタじゃなくて?」
「ああ。あの真っ赤なエプロンは、
どうせこの色になるからと言ってつけてたくらいだからな」
「嘘だ!ルッコは夕日の色だって・・・」
「まあ聞け」
「あいつは“あること”をきっかけに変わったんだ」
「あること・・・?」
おれとヒメウは再度顔を見合わせた。
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