【スティル・グリーン】

-P26-



「そして・・・グランドラインから戻ったおれたちはいつの間にか分散して、
ルッコはリリースクに、おれはバラティエに拾われることになったんだ」

「ルッコはリリースクを選んだことを、さぞかし後悔しているだろうな」

「たく、おめーはまだそんなことを・・・ルッコは後悔なんざしてねェよ!」

「なんで言い切れるんだよ!」

「リリースクは、ルッコの嫁さんの故郷だからだ」

「そうだったんですね・・・」

ヒメウは口元を覆ったまま、つぶやいた。

「・・・だからと言って・・・」

「あああ!もうこの話はしまいだ!!
サンジ、とっとと出航準備にとりかかりやがれ!」

そう言いながらデュラムは両手で眼前の空をかきまわすような仕草をして、
いまだ不服そうなおれに視線を落とし、付け加える。

「ルッコと違っておれは荒くれもののまんまだったからな。
ホント、バラティエがあってよかったわ。
オーナーにはすげェ感謝してる」

おれは同意の言葉を飲み込んで、
今にも逃げ出して行きそうなトサカをぎゅっと胸に抱え、
その羽に顔をうずめた。



「それじゃあ出発ですね!私、がんばります!!」

ひととおり準備が整うと、
ヒメウは意気揚々と胸の前で両こぶしを握りしめる。

「おいおい、お前は病み上がりなんだから無理すんなよ?」

「そうそう、女性は特に環境の変化に敏感だからね。
くれぐれもご無理なさらぬよう・・・」

・・・・・・

「「・・・・・・・て、えええ!?」」

その場にいた全員が、ワンテンポおいて大声を上げた。

ラビオが、ごくごく自然に会話に入ってきたからだ。

「ラ、ラビオ!どうしてここに!?」

おれが声を裏返えして叫ぶと、デュラムも負けじと声をひっくり返す。

「つーかいつから船にいやがった!?」

「誰よりも早く」

ラビオはこともなげに即答した。

「なんなんだお前!船を下りろ!もう出航すんだから!」

デュラムがバラティエのデッキを指差して促すと、
ラビオはさも悲しそうに返答する。

「そんな!冷たいじゃないか、デュラム元船長!」

「あ!おま・・・」

デュラムが慌ててラビオの口をそのごつい手でふさごうとしたが、
ときすでに遅し、おれとヒメウはしっかりとその言葉を拾った。

「デュラム・・・“元船長”?」

デュラムは、神よ、とつぶやき青ざめた顔で天を仰いだ。

「元船長はご気分が優れないようなのでぼくから説明を・・・
実はぼくも、デュラムとルッコのいた海賊船に乗っていたんだよね」

「ええっ!?」

おれはまだ出航前だというのに、
次々と明るみになる事実にすでにものすごい疲労を感じていた。

「サンジくん、知らなかったの?」

「ああ、初耳だよ。なんで今まで黙ってたんだ?」

「デュラム船長は気をお使いになったのです」

ラビオはすましたように片目を閉じて、
もう片方の目でデュラムをちらと見やり、続ける。

「同じ海賊船にいた二人が一緒に入店しようとしたら、
いかにも“乗っ取り”みたいじゃない?」

「だけど・・・入っちまえばこっちのもんだろ?」

「そうだね。入店後は、事情説明が面倒くさくなったのでしょう。
デュラムの悪い癖だ。だけど説明しないからには、ひた隠しにしてたよ」

「でもラビオさんから皆さんに説明すれば・・・」

「ばれそうになるたび慌てるデュラムが面白くてつい、
そのままにしてきちゃった」

ラビオはペロッと舌を出す。

「なにィ!?そーだったのか!!
おれの今までの苦労はいったい・・・!」

デュラムは鬼のような形相で言い、
今にもラビオに飛び掛りそうな勢いだ。

ラビオにかかれば、ドエス・デュラムも形無しだな。

「おっとデュラム、お姫様が怖がってますよ?」

ヒメウは急にふられて、えっ私?なんて言ってるが、
デュラムは太い眉を思いきり下げ、
ヒメウに怖がらせてごめんと即座にあやまっていた。

「それでラビオはなんでここにいるんだよ」

おれがそもそもの疑問を投げかけると、
ラビオは再び即答した。

「ぼくも連れていってもらおうと思って」

・・・・・・

「「は・・・はあああああ?」」

そして同じく再び、その場にいた全員がワンテンポおいて大声を上げた。




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