【スティル・グリーン】

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「コケー!!」

そして次に大声を上げたのはトサカだった。

「なんだよ、急に暴れんな!!」

羽根をばたつかせ大暴れするトサカをおさえつつ、
その羽先が必死に指すほうを見ると、
ゆっくりと離れていくバラティエがあった。

「おい!船が動いてる!!」

「なにィ!?」

デュラムが当たり前のようにラビオをにらみつける。

「さすがデュラム、野生のカンかな?
お察しのように、碇はさっきぼくがあげました」

「えっじゃあ・・・」

ヒメウが言いかけると、ラビオは左腕を胸の前に流し足を交差させ、
“いらっしゃいませ”のポーズをとって深いお辞儀とともに言った。

「お世話になります」

「・・・たく!こーなっちゃしょうがねェがな、
いいのか?ラビオ。お前、仮にも給仕長だろうが」

「ご心配なく。これは新人君たちの成長のためにもいい機会だから」

そのときタイミングよく、
遠くなっていくバラティエの甲板から大声が聞こえた。

「ラビオさーん!こちらはお任せくださーい!!」

いつかおれの会話に聞き耳を立てていたウエイターが、
ぶんぶん手を振りながら叫んでいる。

「ね?」

ラビオは満足げにデュラムに目をやったが、
ウエイターが手を振りながら、
微笑とともに「ごゆっくり」と口を動かしたのを、
おれは見逃さなかった。



そして、その後ろにわずかに見えた、長いコック帽も。



* * *



ぶあつい夜があたりを包み、
おれはつぶされそうになる。

ルッコが夜を求めた意味はわかっても、
おれはやっぱり夜が大嫌いだった。

夜の闇はどうしても“死”を連想させるから。



もたらしてしまった“死”を、
救えなかった“命”を。



おれは眠れずに、ここでも同室にされたラビオをおいて部屋を出た。

深夜の海原の濃厚な空気をかきわけながら甲板に出ると、
真上から落ちてきそうな満月が船体を照らす。

ここは明るくて、いくぶんかましだ。

おれはたばこに火をつけると船首のヘリにもたれて、
月に照らされ深緑色に揺れる波を数えだした。

ヒメウの瞳によく似たその色が、
おれを安心させる。

今夜はもう、ここで寝ちまうか。

そう思って体を横にしたとき、
おれの視界に白い裸足が入り込んできた。




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