【スティル・グリーン】
-P27-
「コケー!!」
そして次に大声を上げたのはトサカだった。
「なんだよ、急に暴れんな!!」
羽根をばたつかせ大暴れするトサカをおさえつつ、
その羽先が必死に指すほうを見ると、
ゆっくりと離れていくバラティエがあった。
「おい!船が動いてる!!」
「なにィ!?」
デュラムが当たり前のようにラビオをにらみつける。
「さすがデュラム、野生のカンかな?
お察しのように、碇はさっきぼくがあげました」
「えっじゃあ・・・」
ヒメウが言いかけると、ラビオは左腕を胸の前に流し足を交差させ、
“いらっしゃいませ”のポーズをとって深いお辞儀とともに言った。
「お世話になります」
「・・・たく!こーなっちゃしょうがねェがな、
いいのか?ラビオ。お前、仮にも給仕長だろうが」
「ご心配なく。これは新人君たちの成長のためにもいい機会だから」
そのときタイミングよく、
遠くなっていくバラティエの甲板から大声が聞こえた。
「ラビオさーん!こちらはお任せくださーい!!」
いつかおれの会話に聞き耳を立てていたウエイターが、
ぶんぶん手を振りながら叫んでいる。
「ね?」
ラビオは満足げにデュラムに目をやったが、
ウエイターが手を振りながら、
微笑とともに「ごゆっくり」と口を動かしたのを、
おれは見逃さなかった。
そして、その後ろにわずかに見えた、長いコック帽も。
* * *
ぶあつい夜があたりを包み、
おれはつぶされそうになる。
ルッコが夜を求めた意味はわかっても、
おれはやっぱり夜が大嫌いだった。
夜の闇はどうしても“死”を連想させるから。
もたらしてしまった“死”を、
救えなかった“命”を。
おれは眠れずに、ここでも同室にされたラビオをおいて部屋を出た。
深夜の海原の濃厚な空気をかきわけながら甲板に出ると、
真上から落ちてきそうな満月が船体を照らす。
ここは明るくて、いくぶんかましだ。
おれはたばこに火をつけると船首のヘリにもたれて、
月に照らされ深緑色に揺れる波を数えだした。
ヒメウの瞳によく似たその色が、
おれを安心させる。
今夜はもう、ここで寝ちまうか。
そう思って体を横にしたとき、
おれの視界に白い裸足が入り込んできた。
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