【スティル・グリーン】
-P29-
そのとき不意に、後ろでドアの開く音がした。
おれはおかまいなしの勢いだったけど、
ヒメウはいち早く音に反応しておれから離れた。
「あんだ、お前ら起きてたのか」
その低い声に遅れて飛びのき振り向くと、
操舵室に毛布をひいてごろ寝していたデュラムが、
頭をぼりぼりかきながら出てきたところだった。
「な、なんだよデュラムこそ、甲板になんの用だ!」
おれは月明かりがあるとはいえ、
今が夜でよかったと心から思った。
おそらくヒメウもそうであろう、
真っ赤に染まった顔を見られずにすんだから。
「夜の海風は体に良くないぜ〜・・・ふゎ・・・」
あくびと一緒につぶやきながら、
ズボンのチャックに手をかける。
「うおい!レディの前だぞ!!」
海に向かってズボンを下ろしかけているデュラムをあわてて制止する。
こいつはフェミニスト面してよく言うぜ。
「おっとと、こいつァ失礼、小鳥ちゃん」
「いいんです、私もう部屋に戻るから」
「え、そうか?」
しまった、ちょっと感情がこもっちまったか?
自分の声のいかにも残念そうな響きに、
かすかな後悔を覚える。
瞬間、立ち上がったヒメウの表情に、
安堵の色がみてとれた。
「おやすみなさい、デュラムさん・・・サンジ君」
そしておれの名を少しためらいがちに発音した気がした。
おれの、目を見ずに。
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