【スティル・グリーン】
-P32-
結局、サンリーフに着港したのは日暮れぎりぎりになった。
ヒメウの体調を考慮し港近くに宿をとって休むことにしたおれたちは、
落ち着き先を探して、左手に波の音を聞きながらゆっくりと海岸通りを歩きだした。
サンリーフの島自体はそんなに広いわけじゃないが、
リゾート地なだけあって宿屋は点在している。
しかも海岸寄りの宿はどれもコテージのようなつくりのこぎれいなものばかりで、
いかにも高そうだ。
そんなこともあり今夜の寝床を決めかねて行き迷っていた4人と1匹は、
海に沈むリゾート地ならではの雄大な夕陽を前に誰からともなく足を止め、
地平線に伸びてゆくそれが放つひかりをぼんやりとながめていた。
「あら・・・あなたたち・・・」
そのときふいに、
灯りのともったばかりのレストラン入り口の軒先から若い女性の声がして、
おれを含む野郎3人は俊敏な動きで振り向いた。
バラティエに勤める男のサガだ、しょうがねェ。
「あ!あなたは・・・」
「やっぱり!サンジさんと、バラティエのコックさんたちね!」
そこにいたのは偶然にも、
この旅のきっかけとなる情報をくれた二人の女性のうちの一人、
ばら色の頬をした女性だった。
「すごいわ!本当にすぐにいらしたのね!!」
女性は入りかけたレストランの石段を、
海辺に良く合う白いワンピースの裾を優雅に持ち上げて降りてくる。
「ええ、情報をくださって本当にありが」
「お手を、マダーム」
言葉途中のおれを押しのけて、
ラビオが女性の手をとった。
たく、ぬかりねェな。
デュラムにいたっては、
ワンピースの裾から覗く華奢な足首に釘付けみたいで、
鼻の下を普段の倍の長さにのばしていた。
「マダム、彼女が探し人の女性の娘です」
おれはヒメウの背中に手をおいて、
ラビオに手をひかれ石段を下りきった女性の前にそっと押しやった。
するとヒメウは少しあわてたようにもう一歩前に出て、
おれの手のひらからすぐに離れた。
おれは、その速度に違和感を覚える。
ヒメウ・・・?
「はじめまして、マダム。
母の情報をくださってありがとうございました」
「いいえ、いいのよお嬢さん。
私たちもお役に立てたなら嬉しいわ」
ヒメウが丁寧にお辞儀をすると、
女性はばら色の頬をいっそう明るく輝かせて微笑み、
付け足した。
「それとね、私はマドモアゼルよ?」
「「・・・!し、失礼しました!」」
4人は口をそろえた。
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