【スティル・グリーン】
-P37-
ああ、ため息をつきたいのはこっちのほうだ。
こうなったらおれはもう……
「準備ができしだい、すぐにリリースクに発とう」
はっきりと告げたおれの言葉に一同は、
当り前のように同意し、うなずいた。
ただひとり、意外そうな表情でおれを見つめるヒメウを除いて。
* * *
暗い晩餐は終わり、皆すぐに準備やなんやで散り散りに食堂を後にした。
メイドにやらせるからいいのよ、というアパレシタの気遣いだけもらって、
おれは一人キッチンに残り洗い物をしている。
そうしてややこしい運命に辟易としながらも、
これは最後のチャンスなんじゃないかと考えていた。
国を見捨てて逃げ出した、
おれの最後の…
そのときキッチンの入り口が開き、
人が入って来たのがわかった。
その足音だけで誰だかわかっちまうおれは、すでに重症だな。
「…どうかしたか?ヒメウ」
振り向きもせずに放ったおれの言葉に、
不意打ちをくらったように足音はぴたりと止まった。
「…手伝おうかと思って」
「気持ちだけ。ありがとな」
「じゃあ、ここにいてもいいかしら」
「もちろん。お茶でも入れようか?」
「私が入れるわ。紅茶でいい?」
「ああ、サンキュ」
ただ、それだけのやりとり。
内容は、手伝うか手伝わないか、
何を飲むか飲まないか。
ただ、それだけ。
どこにでもある他愛のない会話、それなのに、
おれはこぼれそうになった涙を泡だらけの手であわてて拭った。
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