【スティル・グリーン】
-P39-
たまった涙は濃緑の瞳を映してエメラルド色のきらめきを放ち、
蒼白の頬をつたって落ちた。
おれの両手はヒメウの自由を奪うことに使われているから、
それを拭うことはできない。
こんなことに使うためにある、この手じゃないのに。
「おれのことが……嫌いになった…?」
「違うわ!!サンジ君!!」
言ったはなから自身の女々しさに辟易としたが、
ヒメウがやっとおれの目を見てくれたから
そんなことは吹き飛んじまった。
「違うのよ…私は…」
「私…は…」
そうしておれは、ヒメウがあえぎあえぎ
必死にひねり出そうとしている言葉を
受けとることに全神経を集中させた。
「…っ…私は…ッ!」
「あなたに優しくしてもらう資格なんかないの!!」
「ふれてもらう資格なんか、ないのよ!!!」
ヒメウは血を吐くようにそう叫ぶと、
一瞬ゆるんだおれの両手をふりほどいてキッチンを飛び出して行った。
シカク?
資格ッテナンダ?
ソレハオレニ触レラレタクナイッテコトト、
ドウ違ウンダ………?
さっきまでヒメウの両手首をつかんでいたおれのてのひらは、
まるで氷のかたまりをつかんでいたかのように冷え切り、
どんどん感覚を失っていった。
それはヒメウの感触を失っていくことのようで、
おれは必死になって手をこすり合わせた。
そしてこすり合わせる両手に落ちる涙だけが
人の温度を思い出させ、
おれは泣きやむことができなかったんだ。
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