【スティル・グリーン】
-P45-
ルッコと引き裂かれ、
母を亡くし、
これからこれ以上の悲しみがあるのだろうか。
あるんだろうな……
この城にいる限り。
とめどなく溢れ出る涙はそのままに、
マシコに抱かれながらそんな確信ともいえる予感をおれは抱く。
視線は固定されたように母親からはずせない。
起き上がれ、
起き上がれ。
頭の中で呪文のように繰り返す。
そうしてまるで永遠のような数分を過ごすうち、
おれは何者かと目が合ったような気がしてふと我にかえった。
今この部屋にいるのはぼくとマシコと、
未だ呆然として動けずにいる侍女の三人のはずだ。
だのに感じるこの視線はなんだ…?
そのとき、おれは母の亡骸の頭上にその視線の正体を見た。
母の頭の半分ほどもあるそれは、
どこか憎々しげにこちらを向いて動かない。
いつからいた?
お前がやったのか?
気がつくとおれはサイドボードにあったペーパーナイフをひっつかんで、
視線の先を一突きにしていた。
「王子…!?」
突然に王妃の頭上にナイフを突き立てたおれを見て、
侍女が悲鳴を上げる。
おれはものも言わずただ、
一突きにされた大蜘蛛の体液をナイフの先から滴らせていた。
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