【スティル・グリーン】
-P9-
「おい!おれの指がふやけちまう!」
一向に泣きやまないヒメウの両頬を両手で包み込み、
親指で涙を拭い続けていたおれは堪らず言った。
「も、申し訳ございません!王子!」
ヒメウは慌てておれから身を引く。
「それとな。それ、やめろ」
「それ・・・とは?王子」
「それだそれ!
語尾に必ず“王子”ってつけるの、やめてくれ!!」
ヒメウは「だって王子は王子じゃない」と言わんばかりに
きょとんとしているが、おれはかまわず続ける。
「あとな、外に出たら敬語もやめてくれ」
「この船にいるやつらは、おれの過去を知らねェんだ。
明らかに年上のお前がそんな堅苦しい言葉使ってたら、
おかしく思われるだろ?」
「・・・わかりまし・・・わかったわ」
「お、飲み込み早えーじゃねェか」
「はい。王子のためですから。
でも、なんて呼べば・・・」
「好きに呼べよ。
サンジでもサンちゃんでも、なんでも」
「呼び捨てなんて恐れ多い!」
ヒメウはすごい速さで胸の前で両手を振って、
そして困ったように小首をかしげ言った。
「それでは・・・サンジ・・・君?」
ヒメウは恐る恐る言ったけど、
おれは思ったよりその響きが胸の奥で共鳴してしまい、
言葉に詰まった。
「ダメ、ですか?」
「・・・それでいいよ。
ほら、また敬語!」
おれはほてった顔を見られないように後ろを向き
突き放すようにそう言った。
だけど後を向いたその口の端は、
上を向いていたんだ。
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