【夢から覚めた夢】

-P5-



「好きだ」

彼の腕に力がこもり、好きだ、と繰り返される。

私は何も言えずにいる。

頭の中では、どうしよう、と繰り返してる。

この感情はなんだろう、と。

芽生えたこの感情を、
深く探れば答えに行き着くのだろう。

だけど、答えを知ったところで私はまだ、

頷くことはできないのだ。



* * * * *



私が泣き止むまで、彼は愛の言葉以外を口にせず、
ただひたすら私を抱きしめ、頭をなでていてくれた。

「ナミさん立てる?」

私は彼の、長い脚と脚の間にいる。

よくよく辺りを見渡すと、さっきの講堂じゃない。
窓がなく、薄暗い資料室のようなところだ。

遠くからは時折、どーん、どーんと、
低い音が響く。

事態は決して穏やかではないようだ。

「平気よ。もう動けるから、みんなのところへ連れてって」

・・・ひどい鼻声。

「了解」

そうは言ったものの、彼は動こうとはしない。

「なに?」

照れ隠しも混り、必要以上に
冷たい言い方になってしまった。

彼は少しも気にした様子を見せず、
まだ立ち上がれない私の前に
立膝をついた姿勢で言った。

「聞いて、ナミさん」

「俺はさっき、ナミさんがあいつと一緒にいるところを見て、
鳥肌が立ったんだ」

「ナミさんをどうにかされちまったんじゃねェかと思って」

「同時に、そういう状況にしちまった不甲斐ねェ自分に腹が立って…」

「・・・ナミさんだけは、こーいう目にあわせちゃいけなかったのに」


・・・ああ。

彼はわかってくれている。

私の方こそ、鳥肌が立ってくる。

気持ちが崩れそうだ。



NEXT→

←BACK

TEXT TOP